iPhoneゲームの市場規模を考える。果たして今、「iPhoneゲーム」という市場に参加すべきなのか。
先日、5億ダウンロードを達成したApp Store。
そして、そのApp Storeでリリースされている3000のゲームアプリ。
はたして、App Storeはゲームにとって豊かな黄金郷なのか。それとも不毛の大地なのか。
App Storeはゲームにとってどのような市場なのか。
App Storeの開始からはや半年。総ダウンロード数は5億を超え、配信されているアプリは15,000を超えました。 App Storeという新しい市場は確実に成長しています。(App Store、500,000,000ダウンロード達成。登録アプリは15,000。)
ゲームアプリの配信アプリ数も17日の時点で3,000本を超え、App Storeはゲーム業界にとっても無視できない市場となりつつあるように思えます。しかし、実際のところApp Storeはゲーム業界にとって魅力的な市場なのでしょうか。総ダウンロード数5億とはどのような意味を持つ数字なのでしょうか。
App Storeの市場規模
まずは、App Storeの市場規模を考えてみましょう。
App Storeは8月13日時点で6000万ダウンロード、12月6日時点で3億ダウンロード、1月17日時点で5億ダウンロードと成長しています。 12月から1月の増加はクリスマス商戦時のふくらみなのでひとまずおいといて、12月までの3億ダウンロードを五ヶ月で割って、一ヶ月あたりのダウンロード増加数を仮に6,000とします。
1月以降もこの増加数を維持したとして(難しくはないでしょう)、7月までに3億6000万ダウンロードとすると、App Storeの一年目のダウンロード総数は8億6000万ダウンロードとなります。
今回は、この8億6000万ダウンロードをApp Store一年目の数字としましょう。
さて、肝心のApp Storeの売上なのですが、App Storeの売上が公の場で確認できたのは、App Store開始一ヶ月後にジョブズがThe Wall Street Journalに語った「一ヶ月で6000万ダウンロード、3000万ドルの売上」とのコメントだけです。(IPhone Software Sales Take Off: Apple's Jobs - The Wall Street Journal)
この場合、1ダウンロードにつき0.5ドルの売上ということになりますが、仮にこの比率を基準率とするならApp Storeの売上は4億3000万ドル(1ドル90円として387億円)となります。
また、アプリが価格構成比率のとおりに売れたとすると3,000億円近い数字になってしまいますが、さすがにこれは考えづらい数字です。(App Store -J価格調査2008年12月期その4 日本のApp Storeの平均価格は334円。最多価格は115円。)
そこで、無作為に有料アプリと無料アプリを300本ずつ選び出して実際のダウンロード数を調査して、有料アプリと無料アプリのダウンロード数の比率を出すことにしました。
調査に利用したのはアプリを検索したときに現れる「人気」の値です。実際にどの程度のダウンロードがあれば「人気」バーがどの程度の長さになるのかはおおよそわかっているので、これを利用しました。(誤差はあるだろうけど、他に参考になるような数字も見当たらないし。)
調査は市場の規模が最も大きなアメリカのApp Storeで行いました。
結果は、有料アプリ1ダウンロードに対し無料アプリ7ダウンロードとなりました。
有料アプリの平均価格は12月の調査で451.00円でしたから、
有料アプリ平均価格451.00円÷7×8億6000万ダウンロード=約554億円
となります。
しかし、有料アプリの平均価格は高額アプリが押し上げている事、それらのアプリは実際はそれほど動いていないことなどを考え、少し乱暴ですが1,200円以下のアプリのみで平均価格をとったものを上の式に当てはめてみましょう。
この場合、
1,200円以下有料アプリ平均価格291.41円÷7×8億6000万ダウンロード=約358億円
となります。
そこで今回は仮定として、AppStoreの初年度の売上を358億円から554億円とすることにします。
App Storeにおけるゲームカテゴリの売上
今回は12月の調査結果を援用します。
12月の調査ではゲームカテゴリの割合は22.51%でした。この割合を売上にそのまま当てはめると81億〜125億円となります。しかし、この数字はいささか過小にも思えます。
一方で、世の偉大な先人達は物事は何事でも「二乗にして比較せよ」とも教えています。この先人達の教えに従うならばゲームカテゴリの売り上げに占める割合は52.59%となり136億〜290億円がApp Store最初の一年におけるゲームカテゴリの総売上になります。
ここでは低く見積もって81億円、最も高く見積もって290億円をゲームカテゴリの総売上とします。
他の市場との比較
では、この高く見積もって290億円という市場は、他のゲーム市場と比べるとどの程度の規模なのでしょうか。
家庭用ゲームソフト(世界) 8,487億円(2007年度CESA調べ)
家庭用ゲームソフト(日本) 3,823億円(2007年度CESA調べ)
ニンテンドーDSソフト 1,454億円(2007年度メディアクリエイト調べ)
Wiiソフト 787億円(2007年度メディアクリエイト調べ)
パソコン向けオンラインゲーム(日本) 1,015億円(2007年度オンラインゲーム研究会」分科会調べ)
だめです。勝負になりません(笑
そこで、iPhoneゲームに一番近そうなケータイのゲーム市場と比較してみましょう。
ケータイのゲーム開発はiPhoneと同じく少人数での開発が基本ですから、開発状況も似たものがあります。ケータイ向けのゲームを作る人々にとってApp Storeは参入しやすい条件を備えているともいえます。
参考にするのは総務省が2008年に発表したモバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果です。
この調査結果によると国内のケータイゲーム市場は2007年の段階で848億円となっています。
iPhoneゲームの市場規模の3倍から10倍という圧倒的な市場規模を日本のケータイゲームは有していました。
日本のケータイゲームは携帯会社へのパテントと運営費などで、アプリが売れた際に実際に手にする金額はアプリ利用料金の4割から6割といわれています(売り切りのアプリの場合はもう少し率がいい)。
しかし、これだけ市場規模が違うとなると、いくらApp StoreでのAppleの取り分が3割だからといっても、積極的にApp Storeに参加するのは躊躇する部分もありそうです。
iPhoneゲームへの参入は時期尚早なのか
では、全世界合わせても最大290億円、ひょっとしたら100億円程度”しか”市場規模のないiPhoneゲームへの参入は尚早なのでしょうか。
この判断は難しいところです。
市場の規模だけを見れば、小規模のソフトハウス以外は参入すべきではありません。
小規模のソフトハウスは固定費が低く小回りも利かせやすいため、規模の小さな市場でもメインプレイヤーとして参入するメリットがあります。
ソフトハウスに所属する個々人の能力(4~5人程度のソフトハウスなら、2~3人は"つかえる"人が必要でしょう)がそれなりに高く、いくらかの運があれば組織の規模以上の利益をApp Storeからあげる事も不可能ではありません。
先行者利益もまだまだ望めるでしょう。
しかし、市場規模が小さいため、開発費に対してのリターンは控えめになる恐れもあります。
一方で、大規模なゲーム製作会社はiPhoneゲームに重点的に注力するというわけにはいきません。
iPhoneゲーム専門の少数精鋭のチームを組んでiPhoneゲームにアプローチする手もありますが、人材リソースの有効活用という面からはあまり褒められたものではありません。彼らは規模の大きなプロジェクトに参加して、その中心となり”その他大勢”にも仕事の場を与えなくてはならない立場なのですから。
もっとも、将来のためにツバをつけるための方策は取る必要があるでしょうけどね。ゲームは意外なハードが成長したりしますから……
結論
iPhoneゲームという市場への参入は、今の段階では小規模なソフトハウス以外はあまりメリットがありません。
とくに、日本のような大規模なプロジェクトでゲームを製作する手法に慣れた会社にとっては、iPhone向けにゲームを販売するメリットはあまりありません(将来のために足場を固めるための先行投資はありだろうけど)。
仮に発売したとしても、その売上はせいぜい月間数千万円。少数精鋭が製作して高い評価を受けたとしてもその程度にしかなりません。家庭用ゲーム機のソフトなら、下手をしたらその月の広告費で消えてしまう金額です。
もしiPhoneゲームに参入するのなら、下請け孫請けに低予算で作らせて参入するのがベターな方法です。大企業にとってはローリスク・ローリターンですが。
一方、小規模ソフトハウスや会社内会社による開発チーム、日本の成人向けゲーム製作会社(*)、大手の下請け孫請け会社、そして(わたしも含めた)個人のゲーム作家といった「小さなプレイヤー」にとっては、iPhoneゲームの市場はあらたなフロンティアとして機能するでしょう。
月間数千万円は、「小さなプレイヤー」にとっては大金です。
将来、APP Storeが順調に成長するという保証はありません。
しかし、指をくわえているだけではチャンスもやってきません。
「小さなプレイヤー」のみなさん、いまこそiPhoneゲームを作りませんか?
(*)
いわゆるエロゲは、低予算でiPhoneゲームに移植しやすい。
プログラマがObj-Cを理解していれば、トータル1~3ヶ月程度で移植できる。
PS2に移植するよりも、はるかにリスクは小さいはずだ。
問題は、Obj-Cを理解しているプログラマがどれだけいるかですが……(笑
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コメント
日本の成人向けゲーム製作会社(*)に限って言うならば、「obj-cの理解が・・」以前に、成人向けゲームはAppStoreの審査をくぐれないので、企画として成立しないと思います。
投稿: うるふ | 2009年1月20日 (火) 21時58分
うるふさんこんにちは^^
あ、説明が足りませんでしたね。
もちろんエッチな表現は抜きですよ。
PS2への移植レベルという話です。
例としてはGiftとか(笑
Giftは実際の移植作業はひと月程度だったと聞いています。
(まあ、素材がそろっていたこともあるけど)
ギャルゲのiPhoneゲームへの移植は某大物泣きゲーの話もあるようですが、大手は今のところ様子見といった様子です。
投稿: 阿多永彩 | 2009年1月20日 (火) 22時16分