「デジタル音楽販売サービス」での販売
「デジタル音楽販売サービス」は年々成長(*1)を続けている販売形態で、音楽をデータのみのかたちで販売します。一般にCDよりも安価に音楽を購入する事が出来ますが、一部のサービスでは音質がCDより劣るケースもあります。
デジタル音楽販売サービスは大きく分けて「売り切りタイプ」と「定額タイプ」に大別できます。
「売り切りタイプ」は一曲またはアルバム単位で曲を販売する方法で従来の音楽販売の延長にあるものです。一方「定額タイプ」は月々決まった金額を支払う事で登録されている曲が聞き放題になるものです(*2)。
「売り切りタイプの」代表は「iTunesStore」で、iTunesStoreはデジタル音楽販売サービスの世界シェアのおよそ4割から5割程度を握っているとみられています。この他にも、2008年に音楽ダウンロード販売をサービスインさせたアメリカの「Amazon.com」、日本の着うたサービスに代表される携帯端末向け配信、日本の「mora」など多くのサービスがあります。
日本では着うたなどのモバイルダウンロードが主流で、ダウンロード数の8割前後がモバイルダウンロードとみられています。
「定額タイプ」のデジタル音楽販売サービスは主流ではありませんが、常に一定の利用者がいます。代表的なサービスに「Napster」、「Rhapsody」、ドコモ端末向けの「うた・ホーダイ」などがあります。定額サービスを提供している事業者は多くの場合売りきりでの曲の販売も行っています。
(*1) 成長はしていますが、伸び率は鈍りつつあります。
(*2) 契約内容により期間内に聴取できる曲数などが決まっている場合もあります。
どちらのタイプにも共通しているのは、個人が事業規模の大きなサービスで配信するためには配信契約を代行する「中間業者を必要とする」という事です。曲の取り扱い点数が多いiTunesStoreなどの規模の大きなサービスでは契約等を効率的に行うためにこのような措置をとっています。
一方で、インディーズレーベル中心の規模の小さなサービスでは個人が事業者と直接契約する事が多く、この場合CDの販売やより事業規模の大きなサービスへの配信を代行するなどの業務も行っている場合があります。
さて、デジタル音楽販売サービスにも様々なサービスがあるわけですが、AppStoreで頒布しているゲームの音楽を販売するとなると、やはりiTunesStoreでの販売はしておきたいところ。そこで、iTunesStoreでの配信契約を代行しているサービスとして「CD Baby」「monstar.fm」「TuneCore」の3サービスを比較してみましょう。
と、その前に……
予備知識としていくつかの事をあらかじめ説明しておきます。
その1。
大手ダウンロード販売サービスで曲を販売した場合、販売額の約20%から30%が大手ダウンロード販売サービス側の取り分となります。残った70-80%を中間業者に支払い、中間業者はその中から手数料を徴収し、残った分をコンテンツホルダーに支払います。
某大手ダウンロード販売サービスを例にすると、日本で一曲売れたら約105円を、アメリカで一曲売れたら¢70を、EUで売れたら70ユーロセントを中間業者とコンテンツホルダーで分配するわけですね。
ある程度の規模のあるレーベルの場合は音楽出版社が中間業者の立ち位置になります。
なお、比率は度々改訂されるので、おおよその目安と思っていてください(契約内容によっても変わりますし)。
参考までに、各国で展開している某大手ダウンロード販売サービスで一曲売れた場合、日本円にしておおよそどの程度の金額になるのかを表にしてみました。金額は消費税相当額が内税の国のものはそのまま、外税のものは消費税相当額を除いた額です。
| 販売国 | 販売価格 | 日本円換算 | 販売価格-手数料 | 販売価格-手数料 日本円換算 | 販売価格-手数料 米ドル換算 |
| *2008/11/27製作 | |||||
| 日本 | ¥150 | ¥150 | ¥105 | ¥105 | $1.10 |
| アメリカ | $0.99 | ¥94.40 | $0.70 | ¥66.70 | $0.70 |
| 英国 | £0.79 | ¥116.10 | £0.49 | ¥72.00 | $0.75 |
| ユーロ圏 | €0.99 | ¥121.80 | €0.71 | ¥87.30 | $0.92 |
| カナダ | CAD0.99 | ¥76.60 | CAD0.78 | ¥60.40 | $0.64 |
消費税相当額は各国によって異なります。音楽にかかる税率は日本では5%ですが、欧州では20%前後の国が多くあります。また、日本のダウンロード販売では消費税は内税になっていますが(150円のうち約7円14銭が消費税)、国によっては外税になっている国もあります。アメリカのように州や日にちによって消費税相当額が変わる国もあります。
為替レートも企業の予約レートと銀行間相場のレートは異なります。表の値はあくまで目安としてください。
その2
著作権管理団体に曲の配信権の管理を預託している場合、ダウンロード販売サービスが販売額のうち一定の割合を著作権管理団体に対し著作権使用料を支払っています。
例えばJASRACの場合、ダウンロード販売での著作権使用料は販売額の7.7%(または7.7
円のいずれか多い額に消費税相当額を加算した額)と決められているので、ダウンロード販売サービスはJASRACに販売額の7.7%(+消費税相当額)を支払います。この場合中間業者への支払いは7.7%分減るわけですが、著作権管理団体に支払われた著作権使用料は後日、著作権管理団体がコンテンツホルダーに対して公平に分配します。公平に。
その3
iTunesStoreで曲を売るためにはISRCとJANコードが必要です。
ISRCは曲ごとに付けられる固有の番号です。”同姓同名の著作者の同じタイトルの同じ長さの曲”などというものが複数存在していてもISRCが異なれば即座に違う曲だと判別できます。もっといえば、ISRCが異なれば同じ著作者の同じ曲であっても管理上は異なる曲と見なされるわけです。個人でも取得する事が出来ますが、たいていの中間業者がISRCを無料で付番してくれます(あるいは料金に含まれている)。
JANコードはいわゆるバーコードの事です。バーコードはCDのタイトルごとに付番されるもので、iTunesStoreでは内部の楽曲管理の効率化や著作権管理団体へのレポートなどに用いられます。JANコードは所定の手続きを行えば個人でも発行できますが、正直管理は面倒なので中間業者に発行してもらった方が後々楽かもしれません。
なお、JANコードの代わりに北米で使用されているUPCや欧州で使用されているEANコードを用いても問題ありません。
その4
海外のデジタル音楽販売サービスを利用する場合、日本語タイトルは使えるのでしょうか?
結論から言えば「つかえます」
iTunesStoreなどの大手サービスならばまず問題なく日本語タイトルも表示されます。しかし、海外に住む人の多くは日本語を読む事は出来ません。ですから、日本国内のみで配信する場合以外は、英訳のタイトルにするか、英訳のタイトルと日本語のタイトルを並記した方が良いでしょう。
ただし、海外の中間業者やサービスによっては日本語タイトルを適切に処理できない可能性もあります。事前に確認するようにしましょう。
注1)特に断りがない限りすべて1ドルあたり100円で計算しています。
注2)特に断りがない限りシングル曲は1曲150円、アルバム(シングル曲10曲以上)は1,500円としています。
注3) 収益額は銀行間相場や銀行などの各種手数料でも変化します。実際の収益は予想収益の1割から2割くらい低めに見積もっておいたほうが無難でしょう。
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